11月の誕生石は、 シトリン と トパーズ です。
シトリンは和名で『黄水晶』といい、
トパーズを和名で『黄玉』といいます。
シトリンはかつて “トパーズ” と呼ばれていたことがあります。
いわゆる詐称です。
これは、ヴィクトリア時代のイギリスでのこと。
当時、本物の黄色いトパーズはドイツのザクセン地方で産出していました。
そのトパーズはシェリー酒のような色をしていて、『サクソン・トパーズ』と呼ばれて大層人気がありましたが、
産出量が少なくとてつもなく高価でした。
そこで、当時の宝石商人は黄色い水晶でトパーズの”名前仮り”を行ったのです。
その水晶は色の淡いもので、金(ゴールド)に最も良く映えたことから、瞬く間に大流行を見せました。
しかし、それが別の石だということがわかり、独自の『シトリン』という名称で呼ばれるようになりました。
この名前は、柑橘類の”シトロン Citron”の果実の色によく似ていることが名前の語源となっています。
シトロンは、インド原産のミカン科の植物。
その実は淡い黄色でうっすらと緑がかり、その果実は「丸仏手柑」といいます。
よく知られている「仏手柑」はシトロンの変種の方の果実です。
今日市場に流通しているシトリンには大きく2つのタイプがあります。
一つは、シトロンに語源を持つ淡く緑がかったもので、
もう一つは前者に比べると濃い黄色をしていくぶん橙色味を帯びています。
濃いタイプは、アメシストに熱を加えて黄変させたもので、正式には
「バーント・アメシスト Burnt amethyst(加熱紫水晶)」と呼びます。
この、色が変化する現象は近年ブラジルで発見されたもので、
それ以来シトリンの人気は後者のタイプのものに取って代わられてしまいました。
前者のタイプにも処理品が存在します。
スモーキークォーツに熱を加えるとシトロンのカラーに変化します。
これを「バーント・スモーキークォーツ」などと呼びます。
このふたつの色の変化の原因は、
アメシストの黄色は鉄(Fe)
スモーキークォーツの黄色はアルミニウム(Al)です。
この先は科学のお話になるので、気になった方は是非調べてみて下さいね☆
トパーズと呼ばれる石は、古くからありました。
しかし、それは今のトパーズのことではなかったようです。
そもそも、この名前はギリシア語で”Topazios(探す)”と呼んだことが発端です。
この名前は、元々”形容詞”的に使われていたもので、良質の宝石が産出することで知られてた、
紅海の中のSt.John’sという島を探すという行為を呼んだものでした。
この島があるあたりでは、大変霧が深く、探し出すのが困難だったといいます。
そこまでして探し求めた宝石とは…今でいう「ペリドット」だったのです。
かつては、ペリドットがトパーズと呼ばれていました。
トパーズという名前が、今のトパーズに落ち着いたのは1737年のこと。
黄玉という和名も不思議なものです。
日本では黄色いトパーズはほとんど産出しません。
では、何を見て和訳したのでしょうか。
どうやら、最初に見たブラジル産のトパーズの色が頭から離れなかったようです。
この石の代表的な色は黄色。
しかし、実はこの石はとてもカラフルなのです。
日本では1875年頃、滋賀県の田之上山の一体から大きなトパーズの結晶が続々と産出し、
美しいブルーの結晶になったことから世界中に知られるようになり、ほとんどが海外に流出しました。
当時の日本は世界に名だたるトパーズの産出国だったそうです。
トパーズだけでなく、いろいろな石は様々な色を持っています。
好きな石が見つかったら、今度は自分の好きな色合いを探してみるのも良いですね!
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【参考】天然石のエンサイクロペディア 著:飯田孝一